アメリカのインターネット新聞「ハフィントン・ポスト」に次のような記事が掲載されていました。
日本と同じように晩婚化が問題視されているアメリカで、「結婚しない」という選択肢はどのように扱われているのでしょうか?
「けっこう日本と考え方が違うな」と思える部分もありますが、異文化について知ることで、わたしたち日本人が無意識に抱いている結婚や婚活にたいする常識を外すことができるかもしれません。
今回はここであげられている「結婚しなくてもまったく問題がない10の理由」を日本の現状とも比べながらご紹介してみたいと思います。
結婚しなくてもまったく問題がない理由
多くの成人した男女がこんな経験をします。「周りの友人や知人はみんな結婚した。でもわたしはまだどうやって結婚すればいいのか思い描くことすらできない・・」
たしかに若いうちに結婚することを「幸せなことであり、それが普通のこと」とみなす人たちもいます。
が、もしあなたが結婚の話になると何か取り残されたような気分になるとしたら、あなたはひとりではありません。
実際のところ、結婚していないあなたの仲間はこれまで以上にたくさんいます。
記事はこんなふうに始まります。
「結婚していない自分をまわりと比べて疎外感を感じる」のは日本に限らずアメリカでも同じなんですね。
そして「そういう人はこれまで以上に増えているので、あなたが孤独感を感じる必要はありません」というのも、日本・アメリカ問わずいえることだと思います。
若い世代だけでなく、中高年でも「結婚しない人」が増えている
またアメリカの人口調査によると、「50歳以上のカップルで、いっしょに生活しているのに関わらず籍をいれない人の数」は2000年の120万人から2010年には280万人に激増しているそうです。
これには州の制度によっては「結婚しないほうが社会的・精神的にメリットが得られる」ということもあるようです。
このあたり、日本ではむずかしい気もしますが・・
それでは「結婚しなくても問題がまったくない10の理由」としてあげられている内容をひとつずつ見ていきましょう。
1.ほとんどの人は、もう急いで結婚しようとは思っていない
ピュー研究所の統計によると、1980年代初頭には平均結婚年齢は男性が25歳、女性が22歳でした。しかし2011年には平均の初婚年齢はこれまでで最も高くなり、男性で29歳、女性で27歳となりました。
レポートは「この変化は、男女が一人暮らしやパートナーと生活することに比べ、結婚して子供を持つ必要性をあまり感じなくなったことが原因だ」としています。
「昔のようにみんながみんな急いで結婚しようとは思っていない」
「あなたみたいな人はたくさんいる」
だから何も「はやく結婚しなくては!」というプレッシャーを感じる必要はないということですね。。
たしかに「自分がなぜ結婚したいのか?」という問いを自分に投げかけたときに、本当に本心から結婚生活に憧れているのではなく、社会的な要請や圧力からそう考えてしまうケースはけっこうあると思います。
そんなプレッシャーを感じる必要はなくて、結婚したいかどうかは自分のこころにだけきくべきことなのかもしれません。
2.実際のところ、多くの人は結婚してもあまりいいことがないと考えている
2010年のピュー研究所の調査によると、独身の人たちは全般的にいって、既婚者にたいして、
「満足のいくセックスライフ」
「経済的な安定」
「社会的地位を得て幸せになること」についてあまり利点がないと感じています。
また「結婚は人生にとってポジティブなものだ」と感じている人でも、そのうち24%は「仕事に限っていうと、結婚することは明らかにキャリアアップの道を妨げる」といっています。
日本で結婚がキャリアアップとどう関係するかについては男女によっても違いがあるように思います。
子供ができたときに産休をとらざるをえない女性と、育休をとらないケースがまだまだ多い男性とでは仕事への関わり方は変わってきますよね。
それにしても「結婚が明らかにキャリアアップの道を妨げる」という状況があるのは悲しいことです。。
3.男性の場合、結婚は肥満につながります
「女性は結婚すると、自分を解き放つ(→そして太る)」
というのはよく言われる決まり文句ですが、Families, Systems & Healthに掲載された最近の研究によると、どうやら結婚して太るのは男性のほうが多いようです。
中西部の若い男性2,300人の「食生活」「運動習慣」「体重」について調べたところ、結婚した男性は、独身または恋人がいる男性に比べ25%太っていました。
また同じ調査によると既婚男性のうち「太りすぎ」なのは60%だったのにたいし、既婚女性の「太りすぎ」は40%でした。
結婚すると気がゆるんで太る、というのは定説ですよね。アメリカでは男性のほうが太る割合が多いようです。
日本でもマイナビニュースが実施したアンケート調査によると、
「結婚後、約4割の人が『太った』と回答」
「3kg〜7kg太った人が全体の5割」
という結果がでています。
「独身」という緊張感を保ったほうが、身体のスタイルを維持するうえではいいといえるのかもしれません。
4.結婚は多くの経済的な問題をもたらします
多くの年齢を重ねたカップルが、一緒に暮らしながらも経済的理由から結婚せずにいます。
いくつかの州では、結婚している場合、配偶者の借金にたいして責任を追う必要が生じます。そしてより年配者の場合、このことは高価な医療費にも関わってきます。
住んでいる州にもよりますが、老人ホームの費用は毎月14,000ドルもかかる可能性があります。
もうひとつのポイント:結婚することで、シングルペアレント(片親)のときには受けられた子供のための学費援助が取り消されます。
結婚すると、さまざまな法律上の責任が生じてしまい、かえって負担が増えるということがあるんですね。
日本での場合であてはめて考えると、たとえばシングルマザーが受け取る児童扶養手当が結婚するともらえなくなったりということがあります。
この場合、籍をいれずにいたほうが経済的にはラクということになります。
■ ただし自治体によっては「彼氏がいる」だけで児童扶養手当をとめられることもあるようです。
5.結婚は時代遅れの制度かもしれませんし、型にはまりたくない人もいます。
ピーター(ニューヨーク在住、25歳)は結婚していませんが、次のように語っています。
「結婚は子育てをシステム化し、責任と人間関係、そして愛を規定するための保守的な制度だよね」
77歳のレズビアンであるエリザベス・ウッドはニューヨーク・タイムズに次のように語っています。
「私は同性愛者として、ずっとアウトローのように生きてきたでしょ。それを今さら結婚みたいな年代ものの伝統に乗っかるっていうのは、私のこれまでの【とがった】生き方を見捨てるような気がするのよ」
「結婚とは責任と人間関係、そして愛を規定する保守的な制度」
いわれてみるとたしかにそうかもしれません。
その「枠」のなかで自由に愛を表現できる人もいると思いますし、逆に枠にからめとられてしまって自由をなくしてしまう人もいるように感じます。
6.結婚はあなたの友情を危険にさらします
これはおそらく独身の友人が多い人に見られる傾向だと思われますが、多くの人たちが「結婚した後は友人関係を維持するのが難しくなる」と感じています。
ニューヨークマガジンの記事の中で、エイミー・ソーンがカップルがいかにして結婚後に友人たちとの社会生活への興味を失うかについて明らかにしています。
「わたしが結婚すると、友人たちはまるでわたしが伝染病にかかったかのように扱いはじめたわ。
夕食の誘いも深夜の電話もなくなり、そのうち私が招待されていないパーティーの話も聞くようになったの。
もちろん私もすこしは変わったけどね。男を漁るっていうモチベーションがなくなったから、バーティーやバーに行くことへの興味が薄れたの。」
こういうケースは多いでしょうね。
逆にいうと、結婚したあとも変わらず続く友情こそが本当の友情といえるのかもしれません。
今付き合いのある友人のなかで、結婚後もかわらず付き合っていけそうな友人は何人くらいいるでしょうか?
7.結婚は、感情的ニーズについて「ただ一人の相手」に依存するリスクをもたらします
社会心理学者で”Singled Out: How Singles are Stereotyped, Stigmatized, and Ignored, and Still Live Happily Ever After,”の著者であるベラ・デパウロはハフィントン・ポストにこのように語っています。
「結婚した多くのカップルは、彼らの配偶者を”セックスとその他すべてにおけるパートナー”だと見なしてしまう誤ちを犯しています。
配偶者のことを
- 親しい感情や友情を感じさせてくれて、
- 相談相手になってくれて、気にかけてくれて、
- 家庭における財政や家事も共有できて、
- その他もろもろ満たしてくれる
といったように、すべての満足の源泉と見なしてしまうのです。
このことはある種の非現実的な”文化的幻想”をつくりだし、最終的には失望と不幸につながります。
それまでは多くの友人や彼氏・彼女の関係のなかでバランスをとっていた「他人へ求めるもの」が、結婚後は配偶者ひとりにその期待が集中してしまうという危険性が指摘されていますね。
個人的にはこのことは悪いことばかりではないと感じます。
なぜなら1人の他人と向き合うことで、自分が他人に期待していることがいやおうなくあぶりだされ、自分が人に何を期待しながら生きているのかみつめなおすきっかけになるからです。
他人に期待していることに無意識でいると、それを満たしてくれない相手に不満や怒りを抱いたり、人間関係の苦しみが生まれる原因となってしまいます。
1人の相手と向き合うことで自分のことがよく理解できるようになり、自分を理解することで「自分にとっての幸せ」をつくることもできるようになるという面が、結婚にはあると思います。
8.今日、幸せな結婚をするためには「維持するのが大変な、時間とエネルギーにたいする真剣なコミットメント」が必要とされています
人間関係について研究している心理学者のエイリー・J・フィンケルは今日の結婚においては
「パートナーシップに充分な時間とエネルギーを投資する人が、これまでになく結婚生活から利益を得ている」
と結論づけています。
これは逆にいうと「パートナーシップに多大な時間とエネルギーを投資しなければ、幸せな結婚生活を維持することはできない」ということを表しています。
この心理学者の研究によると低所得のカップルほど離婚率が高く、その原因は「低所得のため長時間労働が必要で、パートナーのためにかけられる時間とエネルギーが不足するからだ」としています。
長時間労働や休みの不一致でふたりですごす時間が十分にとれないと、たしかに関係性を維持していくのは難しいですよね。
幸せな結婚をしたいなら「ふたりですごせる時間がちゃんととれそうかどうか?」というのも判断基準にいれる必要がありそうです。
9.そして、暗く聞こえるかもしれませんが、この国では多くの結婚がとにかく離婚で終わります
離婚についてのアメリカの統計は、「結婚が永遠に続くものだ」と信じている人たちにとってぞっとするものとなっています。それによると、初婚の約40−50%、そして2度目の結婚の約60%が離婚に終わるというのです。
オハイオ州コロンバスの122人を対象にしたピュー研究所の調査によると、中産階級の対象者の67%が、
「結婚にはわくわくするが、万が一離婚した場合の社会的・法的・感情的、そして経済的なその後の成り行きには不安を感じる」
と答えています。
離婚率が高いのは日本も同じですね。
日本では3組に1組が離婚するという統計がでています。(2015年人口動態統計 厚生労働省)
結婚する前から離婚後のことを考える人はすくないとは思いますが、「離婚する可能性が高いなら、そうなったときのもろもろの感情的・法的な問題がめんどくさいから結婚しない」という面もゼロではないと思います。
10.さらに、結婚の代わりになる良いものがあります。「civil union」「domestic partnership」(事実婚制度みたいなもの)です
もしあなたが意味のある(公的な)つながりを特定のパートナーと持ちたくて、でも結婚という形式は嫌だという場合、いつでも「civil union 」または「domestic partnership」というオプションを行使することができます。
このオプションはゲイカップルの間ではポピュラーですが、男女のカップルもしばしばこのオプションを利用しています。
たとえばイリノイ州が2010年に「civil union」の法案を採択したとき、州議会議員で法案の提唱者だったグレッグ・ハリスは異性同士のカップルもこのオプションを利用できるようにしました。
日本の場合はまだ結婚に変わるような法的な制度はありませんよね。
事実婚や婚外子を法的に守る制度によって少子化を克服したフランスやスウェーデンの例もあります。
日本でも従来の「結婚」以外のパートナーシップの枠組みや選択肢がつくられ、選べるようになっていくといいなと思います。
まとめ
以上、今回は「結婚しなくてもまったく問題がない10の理由」についてご紹介してみましたがいかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した記事は国が違うため条件等も異なる点もありますが、必ずしも「結婚しないといけない」という固定観念に縛られる必要がないのは共通していえることだと思います。
かえって「結婚してもしなくても、どっちでもいい」という意識で結婚を重く考えないほうが、深刻にならずにいい婚活ができるのではないでしょうか?
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